国連のGHS導入により、化管法のSDS制度が変わりましたが、労働安全衛生法の制度も、物質ごとに、ラベル表示義務、SDS交付義務、表示・交付の努力義務が定められました。
GHSとは、「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)」のことです。国連経済社会理事会においてまとめられているものであり、国際的に推奨されている化学品の危険有害性の分類・表示方法を指します。
日本においては、平成24年に、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(化管法)及び労働安全衛生法において、GHSの導入の促進を目的とした省令等の改正が行われました。
化管法の関連省令の改正では、対象化学物質について、新たにラベル表示に関する努力義務が追加されました。また、SDSやラベルの作成、提供に際しては、JIS Z7253に適合した方法で行うことが努力義務とされました。
一方、労働安全衛生法においては、労働安全衛生規則が改正され、譲渡・提供する際、SDSの提供又はラベルによる表示が義務となっている物質に加え、原則として危険有害性を有する全ての化学品についてもSDSの提供及びラベルによる表示を行うことが努力義務とされました。
労働安全衛生法における表示・文書交付制度の対象物質は、①表示義務の対象物質、②文書交付義務の対象物質、③表示・文書交付の努力義務の対象となる物質に分けられます。なお、主として一般消費者の生活の用に供される製品は除かれます。
現在、①の表示義務の対象物質は104物質、②の文書交付義務の対象物質は640物質です。
③の表示・文書交付の努力義務の対象となる物質については、平成24年4月1日施行のものであり、表示義務又は文書交付義務の対象物質以外の危険有害性を有する全ての化学物質及びそれを含有する混合物についても表示及び文書交付が努力義務とされました。なお、ここで言う「危険有害性」とは、JIS Z7253 において、危険有害性クラス、危険有害性区分及びラベル要素が定められた物理化学的危険性又は健康有害性を有するものとされています。
平成27年6月10日、労働安全衛生法施行令が改正され、①の表示義務の対象物質が改正されました。平成28年6月1日より、法第57条第1項に基づき譲渡又は提供の際に名称等の表示が義務付けられる対象物について、これまでの104物質から、別表第9に掲げる通知対象物(640物質)にまでその範囲が拡大されることになったのです。
改正後の名称等を表示すべき危険物及び有害物は、次の通りとなります。なお、表示義務の対象物のうち、譲渡又は提供の過程において固体以外の状態にならず、かつ、粉状にならないことその他の厚生労働省令で定める要件を満たすものを、労働者の危険又は健康障害が生じるおそれのないものとして、表示義務の対象から除きました。
①別表第9に掲げる物(イットリウム、インジウム、カドミウム、銀、クロム、コバルト、すず、タリウム、タングステン、タンタル、銅、鉛、ニッケル、白金、ハフニウム、フェロバナジウム、マンガン、モリブデン又はロジウムにあっては、粉状のものに限る。)
②別表第9に掲げる物を含有する製剤その他の物で、厚生労働省令で定めるもの
③別表第3第1号1から7までに掲げる物を含有する製剤その他の物(同号8に掲げる物を除く。)で、厚生労働省令で定めるもの
本改正を図で示すと、次の図表の通りです。(クリックすると拡大されます。)
図表:表示(ラベル)対象物質の拡大と適用除外(概念図)
参考出典:厚生労働省資料
関連法令 条文内容現在日:平成28年02月01日
・労働安全衛生法 ( 昭和47年法律第57号 )
・特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律 ( 平成11年法律第86号 )
・労働安全衛生法施行令 ( 昭和47年政令第318号 )
・特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律施行令 ( 平成12年政令第138号 )
・特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律施行規則 ( 平成13年内閣府・財務・文部科学・厚生労働・農林水産・経済産業・国土交通・環境省令第1号 )
・労働安全衛生規則 ( 昭和47年労働省令第32号 )